作業員は出庫する前に、当日担当する現場の内容を、伝票(見積り書)を見ながら確認します。
営業マンから作業員への伝達事項を記入する欄があって、『当日出庫前に必ず○○(営業マンの名前)まで・・・』と記されていました。これは文章で伝えるより、口頭でしっかりと伝えたいからと、重要な連絡がある場合に良く使われた手法です。
その現場の作業責任者であった私が、営業マンに聞いてみると、『あ、それね。』と含み笑いです。
「それってワケありで、夜逃げだからって・・・」
深い事情があるらしいんですが、そのお客様は追われる身だと・・。ひょっとしたら、怖いお兄さんたちが来るかもしれないって・・・。もちろん私は責任者として聞きます。「怖いお兄さんが来たらどうするの?」営業マンの返答は「伝票よく読んで」・・・。
確かに、『作業に支障をきたす事項が生じた場合は、引越しを中止する場合があります』、さらに、『引越し代金は返金できません』と記載されていました。
私たちは凍りつきましたが、担当営業マン曰く、ぜーんぶ事情は聞けてるし、ほんとに危なきゃ受けないよ。念のため書いたんだから。と、笑ってます。
行くしかありませんでした。作業前にしっかりと作業内容を確認し、まさに恐る恐るの作業です。無事怖い方々は来られませんでしたが、後にも先にも、あの種の『伝達事項』はその現場だけでした。
怖いものは怖いんです。営業マンが言う、『大丈夫だよ』は作業員にはなかなか伝わりにくいんです。
私が営業マンの時代にも、もちろんこの作業員への伝達事項欄をフルに利用しました。大事なことであるほど、わざとお客様の前で書きます。
このケースはかなり特殊としても、買ってもらった商品が目の前にないだけに、お客様との大事な約束事は基より、どんな些細なことでもしっかり明記して、少しでも安心して頂くことは大事なはずですよね。
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